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SCP-1128-JP
オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル

現在、SCP-JP-1128-Aを含む土地は財団フロント企業を介して取得されています。
建屋入口は柵にて施錠し、カバーストーリー(老朽化)によって民間人の侵入を防いでください。
SCP-1128-JP-A内部に対しての調査・実験はLevel 3以上の職員2名からの許可を必要とします。
また、庭園区域に対するあらゆる接触・実験は、 一時的に恒久的に凍結されています。
→インシデント1128-1を参照。

SCP-1128-JPは、北海道██市に存在する庭園付きの日本家屋です。
SCP-1128-JPは主に、外観上は築年数相応に老朽化した日本家屋(SCP-1128-JP-A)、生物がSCP-1128-JP-Aに侵入した際に転移する異常空間(SCP-1128-JP-A-α)、およびSCP-1128-JP-A-α内でのみ観測可能なヒト型実体(SCP-1128-JP-B)から構成されています。
SCP-1128-JP-Aを外部から観察する場合、その老朽化(外壁の劣化、屋根材の剥落など)はあまり手入れされていない通常の築██〜██年の木造建築相応であり、異常性は確認されません。

SCP-1128-JPの異常性は、SCP-1128-JP-Aに侵入した際に発現します。
何れかの入口からSCP-1128-JP-Aの敷地内に侵入した人物は、SCP-1128-JP-A-αと指定される異常空間へ即座に転移します。
転移の瞬間はカメラ等映像に記録されず、主に「瞬時に消失した」と表現されます。
またGPSなどに変動は起こらず、SCP-1128-JP-A-α内部での移動と同期して動作しているように見えます。

SCP-1128-JP-A-αは、基底現実とは別の世界と見られる異常空間です。
内部は新築時のSCP-1128-JP-Aを正確に模倣していると見られ、間取り、面積などは無人機探査から得られた内部情報と一致します。
SCP-1128-JP-A-α内の天候は常に快晴・昼間であり、経年劣化、汚損、湿度変化などは観測されません。
SCP-1128-JP-A-α内部へ移動した被験者は、自身が移動した瞬間を知覚せず、場所が「そのまま連続している」ように知覚します。
ただし被験者が携帯する映像記録装置や無人機探査による映像では基底現実のSCP-1128-JP-A内部と同期し続けるため、モニター越しでは常に荒廃した元のSCP-1128-JP-Aが映っています。
この現象に因果的な整合性は確認されていません。
また、この空間から脱出する際は、何れかの出入口から敷地外に退出すると基底現実へ帰還が可能です。

SCP-1128-JP-Bは、SCP-1128-JP-A-α内部に出現するヒト型実体です。
SCP-1128-JP-A-α内に併設されている日本庭園風の中庭付近(以下“庭園区域”と呼称)にのみ出現し、日本語・中国語・ロシア語による意思疎通が可能ですが、主に日本語を使用します。
SCP-1128-JP-Bは庭園区域の縁側、庭園の見える部屋、庭園内の飛石上などに出現しますが、現在まで出現の瞬間は記録されていません。

また、SCP-1128-JP-BはSCP-1128-JP-A-α同様、映像機器等による撮影・録音・記録はできず、映像記録・音声記録・画像データは撮影箇所と一致したSCP-1128-JP-Aの情報を出力します。
後に行ったDクラスによる聞き取り調査やスケッチによると、SCP-1128-JP-Bは70から80代のアジア系男性と見られ、札幌市在住であった庭園技術者█氏に酷似していると見られます。
█氏は20██年█月に死亡届が受理されていますが、詳細な死因は不明です。

SCP-1128-JP-Bは当該異常をある程度認識しているとされますが、詳細について問われると不明瞭な言動をとったあと消失、間を置かず視野外に再出現します。
またその際対象は直前の記憶を消失していると見られ、インタビュアーに対し初めて会うような反応を示すことが明らかになっています。
→インタビュー記録SCP-1128-JP-B-11参照 

20██/██/██、SCP-1128-JP-A周辺で地元小学生5名が相次いで行方不明となる事案が発生し、地元警察による一帯の捜索活動が開始されました。
初動捜査の過程で、巡回中の警察官が当該オブジェクト付近において目撃証言、および積雪の上に残された足跡が途切れる形で消失している痕跡を確認しました。
これを受け、警察は当時空き家だった建屋を捜索対象として立ち入り調査を実施しました。その際、

  • 室内の景観が外観と一致しない
  • 新築同様であるが人の気配がない
  • 捜索時、外は夜間であったにもかかわらず窓から日光が差し込む

などの不可解な点が複数報告され、異常事案として扱われはじめました。
無線を傍受した警視庁内に潜入している財団エージェントが財団へ通報、収容プロトコルが即時発動されました。
財団エージェントによる初期調査の際、SCP-1128-JP-A内部への進入を行ったエージェント・██が消失、SCP-1128-JP-A-αへ転移したことから当該物件が異常存在であることが確定し、SCP-1128-JPとして登録されました。
また、捜索に関わった警察官を含む目撃者計█名に対し、クラスA記憶処理を施した上でカバーストーリー「ガス漏れによる集団幻覚」を適用し解放しました。
なお、現在まで地元小学生5名の行方は判明していません。

対象: SCP-1128-JP-a-α
日付: 20██/██/██
実施者:立花研究員、石田研究助手
調査者:D-8428
持ち物:

  • 財団標準の頭部固定式カメラ
  • 音声レコーダー
  • GPS内蔵生体信号モニター
  • 無線通信機
  • 懐中電灯
  • サンプル採取用キット

目的:SCP-1128-JP-a-α内の調査およびサンプル採取

<記録開始>
(0:02~)
立花研究員: D-8428、音声チェック。聞こえていますか。
D-8428: おう、聞こえてるよ。じゃ、入るぞ。
(0:12~ D-8428の足音。SCP-1128-JP-aの玄関を跨いだ瞬間、D-8428が消失。
カメラ映像では引き続き老朽化したSCP-1128-JP-aの内部が映り続けている。)
D-8428: ……おい、ここ本当に空き家か? ピカピカじゃねぇか。外からだと普通のボロ家だったのによ……。
立花研究員: 映像には老朽化した床材しか映っていない。初期探査の報告通り、そちらの視覚情報と差異があるみたいだ。周囲を口頭で説明しろ。
D-8428: 説明って……全部新しいんだって。壁も天井も床も。部屋の畳まで新調したみてぇだし、ホコリもねぇよ。……気味悪いな。

(~12:51 D-8428による内部探査が続く。低重要度のため割愛)

D-8428:まぁ、次で粗方……うおぉっ!?
(D-8428のカメラ映像が乱れる。驚いた際に後方に転んだと推定される)
立花研究員:D-8428? どうした? 説明を。
D-8428:ひ、人だ! 空き家じゃねえのかよ!?
(D-8428のカメラが荒廃した中庭と崩れかけの縁側を写す。人影は確認できない)
立花研究員:D-8428、こちらからは確認できない。今もいるのか?
D-8428:目の前にいるだろ……あ? あぁ……どうも……。
(D-8428が前方に手を伸ばし虚空を掴むような動作をし、立ち上がる)
立花研究員:D-8428? どうなった?
D-8428:え? あぁ、普通にこの爺さんに起こしてもらったんだよ。ありがとな、爺さん。
立花研究員:D-8428、そのヒト型実体について説明してくれ。性別、年齢、容姿など細かくだ。
D-8428:細かくったって……あー、男性、歳は……70から80くらいか? ……忘れたってよ。身長は170cmくらいか?
立花研究員:話せるのか?
D-8428:(鼻で笑う)ハッ、あんたらよりよほど血の通った人間に見えるぜ。なあ、爺さん。……そう、無線で話してんだ。ほら……。
(ノイズ音。無線機のマイクを外している音と思われる)
立花研究員:D-8428、勝手な真似をするな。 D-8428:(やや遠くから)うるせえって……ほら。………………。

(14:12~ 30秒ほどの無音。D-8428の呼吸音や身じろぎの音が微かに記録される)

立花研究員:D-8428、何をしている?
D-8428:(ノイズ音)何って……今爺さんがそっちに話しかけてたろ?マイク渡したんだよ。
立花研究員:……こちらは何も確認できていない。
D-8428:マジかよ。
立花研究員:……一度帰還しろ、D-8428。

〈記録終了〉

終了報告書
未知のヒト型実体が確認された。SCP-1128-JP-a-αと同様に映像、音声共に記録できていないことからSCP-1128-JP-a-αの住民の可能性が高い。
建物の探索を中断し、次回は当該実体とのインタビューを試みる。─立花研究員

対象: SCP-1128-JP-A-α
日付: 20██/██/██
実施者:立花研究員、石田研究助手
調査者:D-8428
持ち物:

  • 財団標準の頭部固定式カメラ
  • 音声レコーダー
  • GPS内蔵生体信号モニター
  • 無線通信機
  • 懐中電灯

目的:SCP-1128-JP-A-α内の調査

<記録開始>
(〜21:39まで低重要度のため割愛)
立花研究員: D-8428、次は中庭内部の調査だ。
D-8428:はいよ。……あ?
立花研究員:どうした?
D-8428:……。爺さんが「庭園は荒らすな」とよ。どうする?
立花研究員:立ち入ること自体もできないか、聞いてみてくれ。
D-8428:あー、爺さん? 荒らすわけじゃないんだが、入るのも駄目か? (約10秒の沈黙)ああ、そうかい。
立花研究員:D-8428、SCP-1128-JP-Bはなんと言っている?
D-8428:飛石の上を渡るだけならいいらしいぜ。この……砂の、あぁ、枯山水? は踏むなとよ。
立花研究員:なるほど。ひとまずはSCP-1128-JP-Bの指示に従い、飛石の上から中庭内の調査をしてくれ。
(23:01〜27:55 D-8428が飛石の上から中庭の調査を行う)
D-8428:……つっても、こういう日本庭園? の知識はない……っとわ!?(衝撃音)
立花研究員:D-8428、どうした?
D-8428:ってぇ……飛石から足を踏み外した。あ? おい爺さん、そんな怒──(通信途絶)
(D-8428の位置情報が一瞬消失、すぐにやや移動した地点に再出現する。カメラ映像は暗転し、マイクからはノイズ音のみが記録される。)
立花研究員:D-8428? D-8428、何があった? ……くそっ、機動部隊!

〈記録終了〉

終了報告書
通信途絶後、待機していた機動部隊が突入。中庭外周からD-8428の位置情報付近を捜索したが発見できなかった。
機動部隊員がSCP-1128-JP-BにD-8428の所在を尋ねたところ、そもそも記憶にないような素振りを見せたとのこと。
SCP-1128-JP-Bは出現の度に記憶がリセットされるのか?
また、中庭内の枯山水にD-8428が転倒した痕跡は見受けられなかった。─立花研究員

付記 1128-4-A:

通信途絶から約██時間後、D-8428のGPS内蔵生体信号モニターが極めて微弱な信号を発信し続けていることが確認された。解析の結果、信号に心拍・呼吸を示す変動は認められず、深度表示は-3.2m〜-5.5mの間でほぼ固定されており、枯山水の直下に相当する位置を示している。
消失事件との関連性を考慮し、無人探査機による掘削作業を立案中である。─石田研究助手

注釈:以下はSCP-1128-JPにおけるインシデント1128-1の記録である。

対象: SCP-1128-JP-A(中庭区域)
日付: 20██/██/██
監督者:立花研究員
操作者:砂田研究助手
使用機器:

  • 財団標準無人探査機(掘削アーム・カメラ・マイク搭載型)
  • 遠隔操作コンソール
  • リアルタイム映像・音声伝送システム

目的: 付記1128-4-Aに基づくD-8428装備品信号の確認および掘削作業

<記録開始>

立花研究員:砂田助手、準備はいいか。機体を中庭区域の当該位置へ移動させてくれ。枯山水の砂利を最小限に掻き分ける形で掘削調査を開始する。
砂田研究助手:了解。

(2:52〜6:22 無人探査機がSCP-1128-JP-A建物内部に侵入。SCP-1128-JP-A-αに転移せず、映像は老朽化した建物内部を映している。)

砂田研究助手:機体移動完了。掘削深度0cmから開始します。

(6:58〜17:10 無人探査機のアームが砂利を掻き分け、掘削を開始。映像では砂利がゆっくりと除去されていく様子が記録される。)

砂田研究助手:深度40cm到達。異常なし。引き続き掘削を──
(砂田研究助手の音声が突然途切れる。操作コンソールの画面が一瞬乱れ、砂田研究助手の席が無人となる。監視カメラでは砂田研究助手が瞬間的に消失した様子が記録されている。)

立花研究員:砂田? 砂田助手、応答せよ。……機動部隊、緊急対応を──
(立花研究員の音声が途絶。監督室の監視カメラでは立花研究員も席から消失。無人探査機の映像は継続して掘削箇所(深度約45cm、土壌露出)を映し続けているが、作業は停止状態。)

〈記録終了〉

終了報告書
本インシデントにより、SCP-1128-JP内部における中庭区域(特に枯山水)への物理的干渉が、直接接触のない遠隔操作および監督行為にも異常影響を及ぼす可能性が判明した。
立花研究員および砂田研究助手の行方は現在も不明。
これを受けて、SCP-1128-JPの中庭区域への損壊を含む一切の干渉は凍結された。追加実験にはサイト管理者の承認を要する。─サイト-██主任 木原

  • spc_1128_jp_楽園のはずの庭園.1765433863.txt.gz
  • 最終更新: 2025/12/11 15:17
  • by 金玉右大臣_左大臣兼任